コソボののどかな田園風景をつっきる道路のうえで、ドイツ人のカメラマンがあお向けに倒れて死んでいた。彼の服装はありきたりのカメラマン風で、どう考えてもこんなことになるなんて昨日の晩には想像すらしていなかったようにみえた。そんなふうに彼は死んでいた。
スロヴェニアの車なのだろうか、古めかしい黄色の車に乗った二人のセルビア人が撃ち殺されていた。一人はまだ生きていて何か言っていたが、その後死んだのだという。今日死ぬとは思わなかったかもしれないが、彼は自分が死ぬかもしれないことを知っていただろう。
ドイツ人のカメラマンは、別の世界から別の世界へ入りこんだのだと思う。報道カメラマンなら、戦場へおもむいて、あるいは自分は死ぬことになるかもしれないぐらいは思うにしろ、たぶん黄色い車のセルビア人とはちがう世界でそう思っていたにすぎない。