主婦マリーがしたこと

マリーは戦争からもどってくる夫を待っています。
その間、おなじアパートに住む友人が妊娠したり、その堕胎を手つだったり、けれども彼女がユダヤ人であったため、いつのまにかゆくえをくらまし、マリーは涙をながすことになります。

夫はもどってきますが、マリーをさそう夫に対し、「私はきれいなシャツをきた男が好きなの」と、彼女は夫を拒絶します。
マリーは堕胎手術のかげの玄人として、知られていきます。
マリーのもとにやってくる、複雑な事情をかかえた女たちに対し、マリーは涙をながし、彼女たちとの友情をはぐくんでいきます。
マリーはあたらしい、ナチスに協力する、ハンサムな若い恋人ができます。

マリーを演じるのは、フランス女優、イザベル・ユペールですが、一見、しらけた風貌のイザベル・ユペールが、次第にみだらにだらしなくなっていきます。
またマリーは、この手術により、その夫には考えられないくらい。裕福にもなります。
耐えきれなくなった夫が、やがて警察に密告し、マリーは死刑になります。
この映画のストーリーそのままとはいえなくても、歴史上、フランス最後のギロチンにかけられた女が、このマリーです。

マリーは悪い女かも知れない。たしかに手術をほどこした女性の一人は、彼女のミスにより、死んでしまいます。この罪はギロチンによってしか、裁けないものだったかも知れない。けれどもマリーは、男性に抑圧され、抵抗できない女たちの仲間ではあったのです。
この映画を、男性、女性の立場とか、マリーの不誠実さとかで語ることはできても、それでは作品の真実にちかづけないような気がします。

今は決して、女ばかりが弱い性とはいえないかも知れません。
けれどもやはり、「強い女性」という存在が世にたしかにいるとしても、男と女の性の条件そのもの自体、女性は抑圧される性なのではないでしょうか。主婦マリーのしたことは、決して肯定できるものではないでしょうが、マリーは今よりずっと古い時代、苦しい目にあっている女たちと、たしかに、なにかの結びあいをもっていた女性なのではないかと思います。

UNE AFFAIRE DE FEMMES

  • フランス /1988年 /108分
  • 監督 脚本 /クロード・シャブロル
  • 製作 /マラン・カルミッツ
  • 脚本 /クロード・シャブロル
  • 撮影 /ジャン・ラビエ
  • 音楽 /マチュー・シャブロル
  • 出演 /イザベル・ユペール /マリーフランソワ・クリュゼ /ポールマリー・トランティニャン /リュシーニルス・タヴェルニエ

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