フリートウッド・マック
ブルースとポップ その狭間にあったもの

FLEETWOOD MAC
Future Games The Other One Heroes Are Hard to Find

フリートウッド・マックの歴史は、1960年代、ピーター・グリーン( 緑神とよばれた )という名ギタリストによってイギリスで始まりました。当時のヒット曲として、 ブラック・マジック・ウーマン があり、これはサンタナの名曲としても知られています( オリジナルはフリートウッド・マックだといわれています )。
70年代に入り、ピーター・グリーンが脱退、バンド初のアメリカ人ギタリストとしてボブ・ウェルチが加入します。ここからフリートウッド・マックの音楽は、アメリカ現代文学であったり、アメリカン・ニュー・シネマにも通じる、ブルースを基本におきながらも、感傷的で虚無的なものへと変わっていきます。TVや雑誌でフリートウッド・マックが特集されても、なぜかぬけおちている時代、しかしもっともすばらしい音楽を発表していった時期でもあります。やがてボブ・ウェルチが脱退、今に知られるポップなフリートウッド・マックへと変身していきます。このほとんどの時間、バンドにたずさわりつづけている、キーボードのクリスティン・マクヴィーも、しっとりとしたいい曲を書き、歌いつづけています。

ピータ・グリーンの時代から、ブルースでかためられたしぶい音楽が、全米チャートをにぎわすポップなグループになると、よくあることですが、甘くなったと責められます。けれどこのバンドの場合、そんなことは一切ありませんでした。’60年代の硬派なブルース、’70年代のメロウなブルース、そして’80年代からのポップ路線と、形態はちがうようにみえても、フリートウッド・マックが保ちつづけている空気はおなじだからかも知れません。そんな長い歴史をもつ彼らの中期( ボブ・ウェルチが在籍していた時代 )の作品から、アルバム フューチャー・ゲームス をお届けします。またこの時代、目立たないながらバンドの中心であったボブ・ウェルチについても考えてみたいと思います。バンドの軸をつくったメンバーであるといえるでしょう。

Bob Welch

Stevie Nicks

Peter Green

Black

Magic Woman

Live Boston 1970

Discography
1971Future Games
1972Bare Trees
1973Penguin
1973Mystery to Me
1974Heroes Are Hard to Find
Boston Live FLEETWOOD MAC
1977French Kiss
1979Three Hearts
1979The Other One
1980Man Overboard
1981Bob Welch
1983Eye Contact
1991The Best of Bob Welch
1994Greatest Hits
1999Bob Welch Looks at Bop
2003His Fleetwood Mac Years & Beyond
2004Live from the Roxy
2006His Fleetwood Mac Years and Beyond
2008Greatest Hits & More
2011Sings the Best Songs Ever Written
2011Live in Japan

BOB WELCH
Future Games Church

French Kiss The Other One この2枚のアルバムは輸入盤で、ほとんど知られていません。 フリートウッド・マックにあたらしい風をふきこんだボブ・ウェルチのソロアルバムです。フリートウッド・マック時代の名曲もいくつかふくまれていますが、全くアレンジがちがいます。

ボブ・ウェルチ時代のフリートウッド・マックの名曲 フューチャー・ゲームス も入っていますが、繊細なアレンジが効いていたフリートウッド・マック版にくらべ、なにか空虚な曲になっています。
しかし曲の美しさに変わりはなく、なんの工夫もないバージョンであるがゆえに、より空虚さは増し、なんとも言葉で表現できない雰囲気が漂います。 けれどもアルバム自体はとても明るくポップです。しかしだからこそ、この空虚さは何なのだろうと思わされてしまうのです。

ボブ・ウェルチの曲には一度好きになるとやめられなくなる魔力もあります。ソロとして発表している曲には奇妙な曲もあるのですが、それさえ何度も何度も聴きたくなります。とりつかれてしまうのは、彼の音楽にある、ある種の容認してくれるようなやさしさのせいかも知れません。
この2枚のアルバムから、彼がフリートウッド・マックにもたらしたものは何だったのかということも考えさせられます。

緑神ピーター・グリーンのあと、ボブ・ウェルチがこのバンドに加入しなかったとしたら、もしかしたらスティーヴィー・ニックスとリンジー・バッキンガムの時代はやってこなかったかも知れません。

数々の美しい曲でちりばめられたようなレコードを残し、2012年、ボブ・ウェルチは自ら命を絶ちました。

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